第一会員イチキ游子の「古墳に混乱コラム」:第十八回
投稿日:2015年03月22日
「春咲小紅古墳考」
ある小春日和の昼下がり、ノンポリ会員ことあたくしは、ライブのリハーサルのため、共演するミュージシャン・ももづか怪鳥のスタジオがある、川崎市の宮崎台を訪れた。
ももづか怪鳥とは、2年前の「古墳にコーフン協会USTREAM 伊豆極楽苑大忘年会スペシャル」の際、古墳になんの興味もないのに何故かLIVEに引っぱり出され、結果として極楽苑の大広間の客席を、背徳と禁断の爆笑で混沌に陥れた天才バカボンギタリストである。
今回リハーサルでこの川崎の宮崎台という町に何度か通っているうちに、なんと「近くに古墳がある」という情報を仕入れたあたくし、さっそく怪鳥にお願いして、スタジオへ行くついでに連れて行って頂けることになった。
いや、古墳知らねえんだけれども、ポリシーの欠片もねえんだけれども、知った町に古墳があるって聞いて行きたくなるあたり、あたくしにも古墳にコーフン協会の子・ダミアンの血が少量は流れているらしい。
怪鳥の原動機付自転車でポカポカとうららかな道をゆく、ローマの休日ならぬ宮崎台の平日。
めざす「馬絹古墳」は、やや高い場所にあるらしく、さすが急坂の宝庫・神奈川県らしい急勾配を何度か登った高台の「馬絹神社」という神社の裏手だという。
この辺一帯の「馬絹(まぎぬ)」という地名も珍しいななどと電柱の住所表示を眺めていると、唐突に原動機付自転車が止まり、途端になんの躊躇いもなく目の前に馬絹古墳が現れた。
(うおぁ、か、かわいい・・・!)
それはそれは、とてもとても可愛らしいプリンのような円墳であった。隣り合わせに並ぶ小さな公園とのバランスが絶妙な心地よさで、さながらセットのお子様ランチのようである。
原動機付自転車を降り、しばし古墳の周囲を眺めてまわる。平日の午後の住宅街ということもあり、やけに静かだ。
「思ったより、小さくないねえ」
陽射しの中、目を細めて古墳を見上げながら、地元民であるももづか怪鳥がニコニコとつぶやいた。
うん、なんとなく理解した。馬絹古墳ちゃん、パッと見は小柄な印象なんだが、それなりにちゃんと見応えに迫力あるサイズ。
例えるなら、可愛くて控えめだから意外に身長高いのに気づかれない美人、つーか。
眼下を一望できそうな眺めの良い隣の公園には、さりげなく古墳について説明した看板がいくつも並んでいた。
7世紀後半に作られたであろうこと、釘が発見されているため棺は木製だったであろうこと。しかも大量の釘が残っていたから棺は一つではなかったであろうことなど…。これまた歴史を押しつけない、初心者向けの優しい言葉で分かりやすく綴られている。
「馬絹古墳は貴重な文化財であるとともに、祖先のお墓でもあります。古墳の上には登らないようにお願いします」
という、一見あたりまえの文言にも、「憩いの場、生涯学習の場」として大切にして行こうという優しいお願いがにじみ出る。
なんつーか、おっそろしく居心地がよい。
珍しい地名「馬絹(まぎぬ)」の高台にあるこの小春日和の空の下、いつまでもふわふわと佇んでいたい「かくれ美人古墳」であった。
連れて来ていただいたお礼を言おうとももづか怪鳥を振り返ると、
「マギヌは、マギー四郎がヌーっと出て来るから馬絹っていう・・・」
機嫌よさげに馬絹の地名のニセの由来を語り出したので、お礼はあとにすることにした。
帰りがけ、古墳の表側にある「馬絹神社」という小さくも重厚な神社に参拝。
これから始まる地獄の特訓リハーサルを思い、
(今月中にギターが弾けるようになりますように・・・)
とドサマギのお願いをしてスタジオへ向かう、今春第一弾の心弾む川崎古墳散歩でありました。
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