第一会員イチキ游子の「古墳に混乱コラム」:第三十一回
投稿日:2016年04月25日
「春爛漫近場古墳巡考」
春、デスネ!
このうすらぼんにゃりと暖かく、根拠のない期待ばかりがムダに膨らむ誰もが愛するこのシーズンがあたくしも大好きでございマス。
引きこもりのあたくしですらオソトに出たくなるこんな時期、ハテサテどこへ参りましょうや?
無論、古墳でございましょう!
なぜならば、この季節を逃すとあたくしのような無精者のノンポリが自発的に古墳巡りをしようなどと思い立つ事はまずないからでございます。
・・・てなワケで、毎度恒例検索タイム。キーワードは「東京 古墳」。
今回見つけたのは小田急線は喜多見駅にある「喜多見古墳群」。喜多見中学校周辺に6基ほどの古墳があるらしい。
おお、喜多見、近いじゃん!なんで今まで気づかなかったんだろうか!よし、ココ行こ!ココ!
さっそく出発オンサンデー。
最近ダンジョンと化した下北沢駅から小田急線に乗り込み各停で8駅。成城学園前駅で各停に乗り換える方が早いんだろうが、どうも乗り換えという作業が苦手なあたくし。
ゆったりお座りコースで喜多見駅到着。
日曜の午後ということもあり街全体がのんびりしててなんかいい。
さて、ここからである。なんせ喜多見中学校の近くにあるということ以外の情報はゼロに等しい。ド方向音痴のノンポリ会員が手を出すにはあまりに危険すぎるミッションである。
とりあえず聞き込み開始。駅前の売店で愛飲オロナ○ンCを購入し、対応してくれた沼田爆似の店長さんに、
「喜多見中学校ってどっちですかね(^◇^;)」
と、教えてもらえないと困りますアピール顔で尋ねたところ、
「あー、自分、喜多見在住じゃないんで(^◇^;)」
と、そんなこと言われても困りますアピール顔で返されさっそく振り出しに戻る。
次なる手、駅前の交番。
幸い二人のお巡りさん以外に人はおらず、親切に対応してくださった。
大きな地図を広げ説明してくれる若いお巡りさんに目的地までの行程を説明される。
「あの道をまっすぐ行くと世田谷通りに出ますんでそこをひたすら左に行くとOKストアっていうスーパーがありまして、それをさらに行くと・・・」
・・・いかん、意外にややこしい。
早くも混乱してきた。地図も読めない上に理解力も乏しいあたくし、しかしここで全集中力を注ぎしっかり聞いておかないと、このままでは間違いなく喜多見で遭難してしまう・・・!
決意も新たに地図に身を乗り出した、その時である。
交番に一人の男性が入ってきた。上下ピンクのスウェットを着ている。なんかものすごいインパクトだが今は彼に気を取られている場合ではない。説明してくれるお巡りさんの声と地図に集中する。
しかし、あたくしの隣に立ったピンクの男性は、もう一人のお巡りさんに言った。
「すいません、駅の反対側におじいさんが・・・」
あ、やめて、それ気になるやつだ、今頭ん中地図の説明でいっぱいいっぱいなの!お願いだから余計な情報持ち込まないでっ!
「座り込んでて、タクシー呼んでくれって言ってて・・・」
やめてっ!気になるからマジやめてっ!
「確か、あの辺に老人ホームとか・・・」
軽く事件じゃん!もうだめだ、気になって地図が!集中、集中!頑張れあたくし!その時、お巡りさんが素敵な笑顔で地図を閉じてあたくしに言った。
「まあ、一応そーゆう道順になりますんで・・・」
ああっ、完っ全に聞き逃しました!60%くらいスルーしましたーッッ!!
しかしもうそれ以上の説明を求めることはできず、遭難フラグの予感に絶望的になりながらもとりあえずお礼を言い、「世田谷通りにぶつかったら左折」という1個目のミッションだけを呪詛のように唱えながら交番を後にした。
しかし、聞いていた行程の多さにひるんで難しく考えすぎていたことと、思いの外わかりやすい道だったことが幸いし、予想に反して目的の「喜多見中学校」へはさして迷うこともなく徒歩30分ほどで辿り着いたのである。
本当にいい意味で東京とは思えない長閑な風景の中、美しい緑道に囲まれた中学校のグラウンドでは野球少年たちが練習に勤しみ、緑道にはちらほらと散歩する老若男女の姿。
ああ、やっぱり来てよかった。無事到着できた安心感でニコニコしながら緑道周辺の地図を確認する。今回行きたいのは比較的近くに見られそうな「第六天塚古墳」「稲荷塚古墳」「天神塚古墳」。古墳群は学校の周辺にあるらしいし、ここまでくればもう何も問題は・・・
・・・問題、あった。
中学校も緑道も見つかったのに、どーゆうわけか古墳がどこにあるやらさっぱりわからぬのである。きたよこれ、最後の最後で路頭に迷うパティーン!
学校の周囲をしばらくウロウロしてみたが一向に気配なし。状況が打開される気がまったくしない。
このまま帰るしかないのだろうか・・・まあ、アタシにしてはがんばったか、ここまでたどり着けただけできっとミラクル・・・いやだがしかし、ここまで来て古墳に謁見できないのはあまりにやっぱりやるせねえ。
そんな悲しみと途方にくれていたその時だった。
その初老の男性が、先ほどから写真を撮ったり地図を見たりと、同じような目的でのんびり散策する様子が気にはなっていたのだが、彼が道端の石塀に座って地図を広げた時思い切って声をかけてみたのである。
「すいません、この辺の地図をお持ちですよね?ちょっと古墳へ行きたいのですが道がわかりませんで・・・」
すると男性は驚くこともなく地図を広げ、古墳群への道を説明してくれたのである。さらに
「小さい地図を持っているので差し上げますよ。」
と手際よくバッグからクリアファイルを取り出すと地図をあたくしに手渡してくださったのである。
賢者キターーー!!!
本当に、本当に、本当に、心からのお礼を伝え、男性の教えてくれた道を行く。
そして、ついに、ついに謁見・・・!
まず最初は「第六天塚古墳」
野性味のある古墳の表面からは、立派な竹の枝が無数にそびえ立ち、まるで「風の谷のナウシカ」の王蟲の菌糸のようで壮観である。
なんつーか、アート感すごくて見応えがある。ホント、王蟲並みにこのまま進みだしそうな生命力を感じてちょっと感動。
次に訪れたのは、先の「第六天塚古墳」からほどない須賀神社を戴くクジラ古墳(←古墳の上になんか乗っかってる古墳のこと)の「天神塚古墳」。
こちらも今思えばなかなかのイカしたビジュアルなんだが、うっかり古墳と気づかずスルーしてしまい、写真を撮り忘れた上に後から詳細を知った次第。失礼しました。
最後に訪れたのは少し離れた「喜多見農業公園」という広い畑の向かいの緑地公園の中にある「稲荷塚古墳」。
これはまた他の2基と比べてポップ。子供たちが遊ぶ公園の中で、花時計のごとく素敵なオブジェとしての存在感を放ち、周りをツツジの垣根で美しく囲まれた箱入りガール的様相を呈していた。
どれもこれも素晴らしくキュートでコケティッシュでビュリホでございました。
地図のおじさま、一生懸命道案内してくれたお巡りさん、ピンクのお兄さん、コンビニの店長さん、本当にありがとうございました。
あたくしが今日、この小田急線の長閑な街・喜多見で美しい緑に囲まれながら古墳を愛でることができているのはあなた方のおかげです。
春、念願の古墳巡りを満喫したノンポリの喜びを、遠くに見える横溝正史の「三つ首塔」のごとき三重の塔に伝え、喜多見の陽は暮れていくのでありました・・・。
また来ます。マジで。近いし。みなさまも、隠れた古墳の銘店・喜多見。お散歩だけでも是非どうぞ・・・!
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