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世界文化遺産に「百舌鳥・古市古墳群」を推薦/大阪

文化庁の審議会は再来年の世界文化遺産への登録を目指して、大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」を日本から推薦することを決めました。一方で、世界遺産の登録に向けては改善すべき課題も多く指摘されました。
これは31日に開かれた文化庁の文化審議会で決定されました。

「百舌鳥・古市古墳群」は、大阪府内に4世紀後半から5世紀後半にかけて造られた49基に上る古墳群です。なかでも、仁徳天皇陵とされる陵墓は全長486メートルに及ぶ前方後円墳で、世界最大級の大きさです。周囲にある円墳や方墳などは埋葬された人物の地位により大きさや形がさまざまで、日本列島における古代王権の成り立ちを表す遺跡とされています。

「百舌鳥・古市古墳群」を推薦する理由として、文化庁は顕著な普遍的な価値があることや同じく審査の対象となった「北海道・北東北の縄文遺跡群」と「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」の2件と比べて、推薦内容の検討が最も進んでいることなどを挙げました。

一方で、世界遺産の登録に向けては大阪府内でも2つの地域にまたがる古墳群を一体として見ることの説明が不十分なことや、ほかの地域の古墳群との差別化をどう図るかという点などで、改善すべき課題があるとも指摘しました。

審議会のあとの記者会見で、文化庁などの担当者は、31日の審議でことしは推薦を見送る意見があったことを明らかにしたうえで、「世界遺産の事前審査にあたるユネスコの諮問機関『イコモス』からも厳しく指摘され、推薦内容の見直しが求められることもありうる。今後は、地元とともに適切に進めていきたい」と説明しました。

今後、政府はことし9月中にユネスコ世界遺産センターに対して暫定版の推薦書を提出し、再来年にユネスコの世界遺産委員会で登録に向けた審議が行われる予定です。
大阪府庁で推薦の報告会
文化庁の審議会が、世界文化遺産への登録を目指して大阪府の「百舌鳥・古市古墳群」の推薦を決めたことを受けて、大阪府庁では、関係する自治体の代表などが集まって報告会が開かれました。

午後4時から大阪府庁で開かれた報告会には、大阪府の松井知事をはじめ、古墳がある堺市、羽曳野市、それに藤井寺市の市長や地元の市民などおよそ70人が集まりました。

松井知事が推薦が決まったことを報告すると、集まった人から大きな拍手が起こり、横断幕が掲げられて喜びを分かち合いました。

松井知事は「皆さんのおかげで国内推薦を勝ち取ることができた。目標はユネスコの世界文化遺産に正式登録されることなので、きょうは万歳はお預けし、正式に登録された際には皆さんと一緒に全身で喜びを表現したい」とあいさつしました。

続いて、堺市の竹山市長が「去年推薦されなかった悔しさを忘れてはならないという思いでここまでやってきた。まずは第一歩だが、世界文化遺産への正式登録を達成したい」と抱負を述べました。
堺市のマスコット「ハニワ課長」も喜ぶ
「百舌鳥・古市古墳群」のユネスコへの推薦が決まったことを受け、大阪の堺市役所では、集まった市民や関係者が喜びに沸きました。

堺市役所の展望ロビーには、世界遺産の登録を応援する市民グループらおよそ300人が集まり、午後4時すぎに推薦決定が伝えられると大きな歓声が上がりました。

古墳の魅力をPRしてきた堺市のマスコットキャラクター「ハニワ課長」は、市民グループの代表らとともにくす玉を割って推薦決定を祝いました。

去年、推薦が見送られた時に「頭が割れそうなくらいショックで、土に帰ろうかと思った」と語ったハニワ課長は、「ものすごくうれしいです。ポーカーフェイスなので表情からは分からないと思いますが、やった!やった!という気持ちです」と話し、古墳が見える方角に深々とおじぎをし感謝を伝えていました。

その一方で、ハニワ課長は「国内推薦が決定し、これで役目を終えられたと思っているので、今後はふるさとの古墳に帰ることも考えていきたいと思います」と話し、世界遺産に登録されるかどうか決まるのを前に引退する可能性を示唆しました。
「百舌鳥・古市古墳群」の世界文化遺産への登録を目指して活動している堺市の71歳の男性は「登録に向けて周辺環境が少しずつよくなってきていたので、ことし、推薦を受けることができてホッしています」と話していました。

また、堺市の69歳の女性は「推薦を受けるまで4年間という長い道のりだったので本当にうれしい。これを突破口に世界文化遺産の登録まで一生懸命頑張りたいです」と話していました。

仁徳天皇陵とされる古墳の近くにある大阪府立堺工科高校では生徒たちが、ペットボトルのキャップで作った古墳を描いたアート作品の前に集まって、推薦決定を喜び合いました。

堺工科高校のエコデザイン部の生徒たちはユネスコへの推薦が決まるのを前に、ペットボトルのキャップを色分けして並べ、「百舌鳥・古市古墳群」を描いた作品を完成させました。この作品は、縦18メートル、横21メートルの巨大なもので、ペットボトルのキャップを40万1184個も使い、およそ2年かけて完成させたということです。

校内の中庭に設置されたアート作品の前には生徒たちと教員が集まり、推薦決定の知らせを聞くと、歓声をあげて拍手をしたり拳を握りしめたりして喜び合っていました。3年生の黒田海斗さんは「作品づくりの苦労が報われたような、うれしい気持ちです。世界中からいろいろな人に来てもらいたい」と話していました。顧問の小寺雅仁教諭は「うれしいのひと言に尽きます。生徒たちとしんどい思いをしながら作ってきたので、念願がかなったという思いです」と話していました。

「百舌鳥・古市古墳群」の世界文化遺産への登録を応援する文化人や経済団体などでつくる会のメンバーで、古墳がある堺市出身の落語家、桂文枝さんは大阪府庁で開かれた報告会で「こんなにうれしいことはありません。先日、世界遺産に登録された富士山に登り、『なんとか百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に推薦されるように』とお願いしました。それが通じたのだと思います。これを機に、大阪が大いに盛り上がればいいと思います」とあいさつしました。
「百舌鳥・古市古墳群」推薦の経緯
国内の世界遺産は、文化遺産と自然遺産合わせて21件となっていますが、近畿2府4県では大阪府にだけ世界遺産がありません。

「百舌鳥・古市古墳群」は大阪・堺市と羽曳野市、それに藤井寺市にまたがる古墳群で、4世紀から5世紀にかけて築かれたとされています。

この中には、仁徳天皇陵とされる国内最大の古墳や、応神天皇陵とされる古墳など全長が400メートルを超える王の墓があり、エジプトのクフ王のピラミッドや、中国の秦の始皇帝陵と並ぶ世界最大級の王の墓とされています。

古墳の大きさや、日本で独自に発展した前方後円墳には、強大な権力を持つ王を中心とする古代国家の形成過程を示す普遍的な価値があり、世界文化遺産にふさわしいとして、大阪府と地元の3つの市は平成25年に初めて、ユネスコへの推薦を目指して名乗りを上げました。

しかし初めての挑戦で、国内候補地を決める文化審議会から、古墳や周囲を含む一帯の保全のあり方や計画が十分でないなど、10点に上る課題を指摘されました。堺市などは屋外広告を規制する条例の策定に取り組みましたが、2回目の挑戦となった平成27年には、文化審議会で再び推薦が見送られ、海外の人にもわかる古墳の価値の詳しい説明など、5点の課題を指摘されました。

そして、3回目となる去年の挑戦でも推薦は見送られ、古墳の歴史的な価値をさらにわかりやすくすることや観光客の移動手段など、推薦に向けたより具体的な課題が指摘されました。4回目となることしの挑戦では、保存状態の悪い古墳を除き49まで絞り込んだうえで、将来にわたる保全や管理の計画を具体化し、観光用の巡回バスを運行するなど、審議会から指摘された課題の解決に取り組みました。

また堺市は、歩道や公衆トイレ、それに再来年度末に完成予定の古墳のガイダンス施設など、総額38億円規模のインフラ整備を進めてきました。

今後の課題は
ユネスコに推薦する候補地に決まった「百舌鳥・古市古墳群」には課題もあります。古墳の多くは住宅地に点在していますが、観光客を受け入れるための道路やトイレなどのインフラがまだ十分に整備されていません。

世界文化遺産に登録されるかどうか決まるのは2年後ですが、登録が実現すれば多くの観光客が訪れて、周辺住民のプライバシーが守られなくなったりゴミが捨てられたりするのではないかと心配する声が上がっています。

また、地元の自治体が期待する国内外からの観光客の増加についても、古墳に立ち入ることができず、観光拠点となる施設もないため、楽観できません。

平成19年に世界文化遺産に登録された島根県の「石見銀山遺跡」は年間に最大で81万3000人余りが訪れていました。しかし、周辺に観光名所が少ないこともありリピーターの確保につながらず、年々、訪問者の数が減って、自治体もさまざまなPRや誘致に取り組んだものの、去年はピーク時の半分以下となる31万3000人余りにまで落ち込みました。

国内候補地に決まったことで世界文化遺産への登録に1歩近づきましたが、周辺住民の理解を得て地元を挙げて盛り上げていくことや魅力ある観光地としてのまちづくりを進めることが求められています。

今後の日程は
世界文化遺産に登録されるかどうか決まるまでには、さらに2年がかかります。
31日の文化庁の審議会で国内候補地が決まったあと、政府は、ことし9月に「ユネスコ世界遺産センター」に暫定版の推薦書を提出します。そして、来年1月ごろ、正式な推薦書を提出することになります。

来年の夏から秋ごろには、ユネスコの諮問機関である「イコモス」が現地調査を行い、イコモスは再来年の5月ごろに、評価結果をユネスコ世界遺産委員会に勧告します。これを受け、再来年の7月ごろ開かれるユネスコ世界遺産委員会で登録されるかどうかが決まることになります。

「佐渡鉱山の価値説明不十分」
文化庁の審議会は新潟県の「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」の推薦を見送った理由について、「世界中に鉱山があるなかで佐渡の価値が何であるかを今一度、整理するべきだ。特に鉱山技術と鉱山を支えた社会の在り方について説明がまだ不十分だと判断した」としています。

「優位性説明が不十分」
文化庁の審議会は「北海道・北東北の縄文遺跡群」の推薦を見送った理由について、「全国のほかの地域でも縄文文化の遺跡が見られるなかで、この遺跡群がその特異性や優位性の点で日本列島を代表するものだと説明できるのか課題がある」としています。

記事のページ:
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170731/k10011081671000.html