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百舌鳥・古市古墳群 観光の起爆剤に 地元一丸でPR 世界遺産に推薦/大阪

近畿2府4県で唯一、世界遺産がない大阪府で、初めてとなる登録の道筋が見えてきた。2019年夏に文化遺産としての登録を目指し、7月31日に国内推薦が決まった「百舌鳥(もず)・古市古墳群」。国内最大の前方後円墳を含み、インバウンド(訪日外国人)で沸く関西では国内外に注目される観光資源としての期待が高まる。ただ、登録後のにぎわいが一時的となるケースもあるだけに、文化的価値の保存と共に、魅力発信や受け入れ体制の整備などの取り組みが求められる。

国内候補決定を受けて、堺市は1日、国内最大の前方後円墳、仁徳天皇陵古墳(大山古墳)の南側にある堺市博物館で仮想現実(VR)技術を活用した映像の提供を始めた。ゴーグル型の専用ディスプレー装置を装着すると、ドローン(小型無人機)で上空300メートルから撮影した古墳群の雄大な景観などが楽しめる。

5世紀の古墳築造当時の景色や古墳内部の石室を再現したCG(コンピューターグラフィックス)映像もあり、家族3人で鑑賞した仙台市の会社員、名和昌輝さん(44)は「前方後円墳の美しい姿が手に取るように分かった。タイムスリップしたようだ」と話した。

堺市の竹山修身市長は仁徳陵を「クフ王のピラミッド、秦の始皇帝陵と並ぶ世界三大墳墓の一つ」と強調する。もっともその巨大さゆえに全体像はつかみにくく、VRなどは課題をカバーする一策だ。宮内庁が管理する仁徳陵など大半への立ち入りが禁止されていることを補う意味もある。

■ブーム継続課題

同古墳群は今回、4度目の挑戦で推薦候補になった。世界遺産に登録されれば観光集客の起爆剤となるが、継続的な集客は容易ではない。京都府立大学の宗田好史教授は「文化遺産としての古墳群の価値は非常に高く、もっと早く推薦されるべきだった」としながら「世界遺産のブームは冷めつつあり、関西国際空港から京都や奈良への通過客を取り込むのはたやすくない」とみる。

1993年12月に国内第1号の世界文化遺産となった姫路城(兵庫県姫路市)では、92年度に88万人だった入場者数が93年度は101万人に増加。「平成の大修理」後の15年度は過去最多の286万人を記録し、16年度は211万人に減少した。

石見銀山(島根県大田市)は7月2日に世界遺産登録10周年を迎えた。登録翌年の08年の観光客数は約81万人だったが、16年には約31万人と登録前の水準にまで落ち込んだ。坑道跡へのアクセスの悪さなどが敬遠され、「リピーターになってもらえない」(観光業者)との見方が多い。

■周辺に施設整備

堺市は20年春をめどに仁徳陵の石室内部や副葬品をCGで再現した映像などが見られるガイダンス施設を付近にオープンさせる。古墳群の100分の1サイズの大型模型を展示、屋上の展望デッキから仁徳陵を間近に望めるようにする。

施設整備にとどまらず観光ボランティアガイドの増員など受け入れ体制の整備も必要だ。「宿泊客は日帰り客の約3倍の経済効果が見込めるため、客室数の拡充が急務だ」と関西大学の宮本勝浩名誉教授。宮本名誉教授は「陵墓は単なる観光地とは違う。日本の歴史や文化に静かに思いをはせる場だ」とも指摘、文化的価値の保存との両立が欠かせない。

堺市の外郭団体、堺都市政策研究所は古墳群の世界遺産が正式登録されると、大阪府に約360億円、このうち堺市に約169億円の経済波及効果があると11年に試算している。

国は18年1月にも同古墳群を国内候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦する。ユネスコ諮問機関の現地調査などを経て、19年7月ごろに世界遺産委員会が登録の可否を決める見通しだ。

記事のページ:
http://www.nikkei.com/article/DGXLASJB31H4O_R00C17A8AM1000/