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「出せば通る」は今や昔、年々厳しくなる世界遺産審査 百舌鳥・古市古墳群、イコモス視察控え地元ぴりぴり/大阪

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎県、熊本県)を登録するよう勧告した諮問機関のイコモス。来年の世界文化遺産登録を目指す「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」(大阪府堺市、羽曳野市、藤井寺市)の地元では、そのイコモスの視察を9月ごろに控え、周辺環境の保全に神経をとがらせている。周辺の関連施設の移転工事を延期したり、景観の妨げとなる広告物の撤去を促したりと躍起だ。背景には近年のイコモスの審査の厳格化があり、周辺で開発中の事業についても厳しい注文をつけるケースもある。(江森梓)

今年4月、古墳近くに計画されていた国内唯一の自転車専門の博物館「自転車博物館サイクルセンター」(堺市堺区)の移転計画の中止が発表された。仁徳天皇陵古墳がある大仙公園に隣接する市有地にある同博物館は、建物の老朽化から、同公園内での新設移転を計画していたが、移転先は古墳が密集する百舌鳥古墳群の中心地に位置することから、運営団体は「遺産登録に影響を与えるのは本意ではない」と中止した。

こうした対応の背景には、イコモスの審査の厳格化がある。昨年5月、「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)についてイコモスは、推薦していた8つのうち4つの史跡の除外を求めた上で、周辺で開発中の事業について、景観への影響評価を実施し、ユネスコに報告するよう勧告したのだ。

堺市も2月、仁徳天皇陵古墳西側の大阪女子大跡地に計画していたガイダンス施設の建設延期を明らかにした。施設には古墳の稜線(りょうせん)を一望できる展望デッキなどが設けられる予定で、今年度中の着工が計画されていたが、市は「イコモスが視察する横での建設工事は、審査に影響が出るかもしれない」として延期を決めた。

さらに堺市と藤井寺市が平成28年度から古墳周辺にある屋外広告物を撤去・回収する経費を補助する制度を行っているほか、府も経費の一部を各市に補助する制度を今年4月から開始。一方、藤井寺市は「少しでも古墳の見栄えを良くしたい」と古墳群周辺の草刈りの今年度の予算を昨年度の約1140万円から約1460万円に増額した。

府や3市でつくる推進本部会議の担当者は「審査が年々厳しくなっているので、それに応えられるよう準備しなければいけない」と気を引き締めている。

厳格化するイコモスの審査 過去には登録延期勧告も

世界文化遺産をめぐるイコモスの審査の厳格化は、近年顕著になっているとされる。国内でも平成19年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」(島根県)について、登録の延期をユネスコに勧告。「普遍的な価値の証明が不十分」というのがその理由だが、日本の候補地について初めて適格と勧告しなかった。

翌20年にも、同様の理由で「平泉の文化遺産」(岩手県)について登録の延期を勧告。いずれも最終的には、地元の熱心な活動もあり、逆転で認定されたものの、これから世界文化遺産登録を目指す地域に与えた影響は小さくない。

文化庁の担当者は「かつては『出せば通る』状況だったが、世界文化遺産の認知が高まるにつれ、向けられる目が厳しくなってきたのではないか」と分析する。

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https://www.sankei.com/west/news/180511/wst1805110058-n1.html