埴輪ビルダー入門
投稿日:2015年6月20日
こんなのができます!
古墳と言えば埴輪です。(いきなり結論を急ぐ書き方)
そして埴輪と言えば、はに丸くんに代表される人物埴輪、ひんべえに代表される動物埴輪などがありますが、円筒埴輪も忘れちゃいけません。
種類も数多ある埴輪の中でも一番古くから作られているし、生産量も桁違いにたくさん作られてるし、あのシュッとした造形も私好み。
(ちなみに「シュッとした」というのは、関西人が何かを褒めるときに使う例えの言葉です)
そんな円筒埴輪が自らの手で作ることができるイベントがあるではないですか!
しかもその円筒埴輪が実際の古墳に並べられる!?
https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014010800053/
よろこび勇んで参加してきました。
古墳大国、群馬へ
円筒埴輪制作ができるのは、群馬県高崎市にある「かみつけの里博物館」というところ。
すぐ横には保渡田古墳群(ほとだこふんぐん)があり、全体が大きな公園として整備されています。
午前8時過ぎ、「かみつけの里博物館」に到着。大口を開けた埴輪がお出迎え。
が、イベント開始時間までまだ1時間以上もある。
しまった、勇みすぎて早く来すぎた。(実際は路線バスがこの時間にしかなかった)
先に保渡田古墳群を見に行くことにしました。
八幡塚古墳。
実はさっきからチラチラ姿が見えていて、キャー古墳よ〜!と心の中ではすでにコーフンしていたのですが、冷静を装って全体が見える場所まで歩く。
長さ約100m。作られた当時の姿に復元されているのでピカピカです。
美しい・・・。
ここ八幡塚古墳には埴輪の列も再現されています。
人物埴輪、動物埴輪、そしてこれから作る円筒埴輪がぎっしり!
写真撮ったり埴輪とたわむれたりしていたら、あっというまに時間が過ぎ、気づけばイベント開始5分前。
慌てて博物館内に入る。
想像以上に本格的
参加者全員が揃ったところで、さっそく博物館横の埴輪制作工房へ移動。そんな工房があるのか。
参加者は1人で来られているかたがほとんどのようです。そして思っていたよりも若い人が多い。
工房の中ではスタッフの方がお待ちでした。
「好きな席に座ってください」ということで、近くの席に腰を下ろす。
おお、粘土。
埴輪は焼き物なので、原料はもちろん土。
粘土遊びって何年ぶりだろうか・・・、大人になってから土に触ることってなくなったよね・・・、と考えているうちに制作がスタート。
作業工程の説明書。
この通りに作っていけば完成するらしい。古代人が作った工程と同じように作ります。
最初は、紐状の粘土を輪っかにしてどんどん上に積み上げていく作業ですね。
時折スタッフの方が見てくださる。
「あ、ここはこうやってこうしてこうやったほうが・・・、ほら、ね、簡単にできるでしょ?」
その簡単が難しいのですががが。簡単の水準が高いことにうすうす感づき始める。
とにかく慣れない手つきで土を触る、そして泥が飛ぶので腰が引ける。
くそう、もっと土と仲良くしてくればよかった。
ちょっとずつ高くなってきた。現在10cmくらいの高さ。
粘土の紐を積み上げながら、定期的に直径と高さを計る。
「あー、これはちょっと大きいね。もう5ミリくらい小さくしようか。」とスタッフの方。
ええっ、5ミリくらい気にしなくてもええんちゃいますのーん。
そう、この円筒埴輪作りには高い精度が求められるのです。
制作工程の説明書と一緒に配られた、高さと直径の関係表。
八幡塚古墳に円筒埴輪を設置するためには、そこから出土した円筒埴輪とまったく同じ大きさのものを作らないといけない、という決まりがあり、その数値を記したものがこの表。
高さ5cmの時は直径19.5cm、高さ10cmの時は直径21cm、そして高さ44cmの時は直径30cm
・・・、うわぁ細かい。
この通りに作らないとスタッフの方から容赦なくダメ出しが飛んできます。(口調はやさしい)
「うーん、あと3ミリ縮めてね」「こっちはもう5ミリ大きくしよっか」
周囲に飛び交う指導の声。そして慣れない手つきで修正する参加者。
しかし、何度も土を積んでいると慣れてきて、感覚的に大きさがわかるようになってくる。
ヒョイヒョイと積んでは計測、積んでは計測の繰り返し、おお、楽しくなってきた。
開始から1時間30分が経過。高さは30cmを超えました。
ここで表面に「刷毛目(はけめ)」という筋を付けて、さらに整形していきます。
※刷毛目:埴輪の表面を整えるために板状の木の工具でつけられた木目の跡。
この木の板で刷毛目を付けます!
表面をなでればこの通り、きれいな筋が付きます。
模様を付けるだではなく、土を固め壊れにくくする意味もあります。
古墳deランチ
正午。1時間のお昼休憩です。
土が乾かないように濡れ雑巾をかぶせて、ご飯ターイム。
お昼ご飯は、保渡田古墳群の二子山古墳が一望できる場所で。
八幡塚古墳と同規模の巨大な前方後円墳。
これは絶景、絶墳ですね。
天気も快晴。ご飯がおいしい。
古墳トリマーの方が伸びた草をきれいに刈り取っていました。
文化財を大切にするお仕事、素敵です。
休憩中、周辺をうろうろしていて見つけた信号機の押しボタン。例を見ない民家の壁埋め込み式。
無言になる午後
午後の部開始。
刷毛目を付けながらさらに積み上げ、高さは40cm近くにまで到達。
無言で土と向き合う時間。集中することが楽しい。参加者のみなも黙々と埴輪を作り上げてる。
埴輪作りは時間がかかる。立ったりしゃがんだりで腰も痛い。
古代人も同じくらいの腰の痛みを感じていたのでしょうか。
すでに4時間が経過。
規定の高さ44cmになった!直径もぴったり30cm!
ふう、これからさらに細部を調節していきます。
装飾が楽しい
まずは埴輪のふちの部分「口縁(こうえん)」をきれいに整形します。
「三本の指でそっとなでながら立体的に仕上げてね、ほらこんな感じで。」
うん、きれいになってきた。急にお化粧を覚えた少女の顔に。
午前中の土を積み上げるだけの作業に比べたら、こういった装飾作業は見た目もどんどん華やかになっていくのでとても楽しい。
さらに埴輪の側面に「突帯(とったい)」という粘土の帯を三本取り付けます。
突帯は飾りでもあり埴輪を補強するものでもある頼もしいヤツ。
まずは、取り付ける位置に目印をつけます。
(この突帯の取り付け位置も下から何cm、と厳密に決まっている)
目印が付きました。
どべ(泥で作った糊)を使って突帯を付けて行きます。
落ちないように慎重に・・・、きれいに付けるために慎重に・・・、でも気を緩めるとぼとりと落ちる。上がる悲鳴。
突帯が付いたら、お次は「透孔(すかしあな)」を空けます。
円筒埴輪にはよく見られる穴。何のために空けられているのか、いろいろな説があるようです。
デザインとして空けたのかなぁ。火が通りやすいように空けたのかなぁ。
突帯同様、まずは目印を付けます。
これも穴の大きさが決まっていて、その通りに空けないといけません。
大きさは横7.7cm×縦6.3cm。ついに作業は1ミリ単位へ。息をのむ参加者。
ヘラでえいっ、と一突き。
実はこのヘラの突き方も決められていました。
古代人がどのように突いたのか、出土した円筒埴輪の透孔の形状を見れば特定できるらしい。すごいなその研究。
透孔を計4つ空けました。
「お疲れさまです、これで完成ですよ」
やった、できた!
埴輪ビルダーになった日
制作時間約6時間。
ついに手作り円筒埴輪が完成しました。
高さ44cm、下から上へ広がる流麗な形状。どうですかこの堂々とした御姿。
サインを忘れていたので慌てて彫る。
これが実際に古墳に並べられた時の識別番号となります。
このあと、埴輪は乾燥され、夏頃には焼かれ、秋頃には八幡塚古墳に並べられるようなので、その頃にまた見に来ようと思います。古墳のどの部分に並べられるのかな。
気分は1,500年前の古代人。
楽しかった!
【かみつけの里博物館】
群馬県高崎市井出町1514
https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014010701664/
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