第一会員イチキ游子の古墳に混乱コラム

第十二回「最北端古墳考」

投稿日:2014年9月16日

今月の初旬、仕事で北海道に行ってきた。
古墳にコーフン協会ノンポリ第一会員ことあたくしの本業は一応「役者しゃん」だったりして、今回は札幌のとある制作会社で地域限定CMの撮影があり行くことになったのである。

第十二回「最北端古墳考」

当日昼すぎに札幌に着いてそのまま夜まで撮影。順調すぎるほど時間内で無事に終了した。

第十二回「最北端古墳考」

帰りに打上げで美味しいお魚食べながらふと思う。
(せっかく北海道に来たのに明日の朝の飛行機でもう東京に帰るのだな…)
ちょっぴり残念に思っていると、とんぼ返りのあたくしを不憫に思ったプロデューサーのGさんが、飛行機の時間を夕方まで遅らせてくださる上になんと車で1日観光させてくださるとおっしゃる。神!神降臨!!
「どこか行きたいところ決めといてください。」
と言われ、前日の夜ホテルで色々調べてみた。えっとねー!時計台観たい!クラーク博士のいる展望台でヒツジも観たい!でも一番観たいのは、ドラマ「北の国から」(←観たことねえけど)みたいな雄大すぎる自然風景です…!!
そう、自然風景…自然…自然…。あ、

「…北海道に、古墳、あるだろうか…」

ハイ出ました!つかまたか!またこの思考パターンか!おまえは古墳にコーフン協会の人か!!
ハイ、そうです…。

というわけで検索してみると、非常に少ないもののいくつか見つかった。その中でも少しでも札幌に近いところをと見ると、あった。

「江別古墳群」

小型だが10基ほどの円墳が見られるらしい。
そこで、Gさんに、
「…あの、江別に古墳があるらしく、出来ればそこに…」
おずおずと申し出ると、Gさんは
「へえ知らなかった。北海道に古墳があるんですかあ!じゃあそっちも行ってみましょう!」
と、他の希望地と合わせて、笑顔で江別行きも快諾してくださった。

しかしだ、ここで一つ心配なことがあった。検索した江別古墳群の所在地である。細かい住所はなく地図もザックリしている。
これはもう、まごうことなき『古墳アドベンチャーフラグ』
まともにぶつかってもすぐには見つかってくれねえ、ぐるぐる迷走コースの予感しかしないわけなんである…。
相手がまりこふん会長ならともかく、初対面でしかも古墳とは無縁のGプロデューサーを地獄の古墳アドベンチャーに巻き込んでしまったら申し訳なさすぎるYO。しかも失敗したらあたくし自身、今日の帰京を諦めて北の大地に骨を埋めることになりかねないYO。

だがしかし連れてってくださるという手前、不安を抱いたままともかく江別古墳群へ出発。

よく晴れた初秋の空のもと、北海道の雄大な道路を疾走し、江別市に入ったところで地元の「江別市郷土資料館」なる建物を発見。

「ここで古墳の情報を仕入れましょう」

いつの間にか、やり手の古墳捜査官と化していたGさんがカッコよく車のドアを閉めて足早に郷土資料館に入っていくのを、慌てて追いかける新米刑事のあたくし。

館内には平日のためか見学者もなく、ガイド兼受付係の女性にお伺い。
「あの…この辺に、古墳があると聞い…」
「あります!!」
食い気味な即答と共に、一見物静かそうな女性の目が鋭く光った…気がした。
この眼…プロだ…!
一瞬勢いにひるんだ我々に、彼女が今度は穏やかな口調で言った。
「場所はお教えしますが、古墳のジオラマなんかもありますので、せっかくだから館内を見学してから行きませんか」
有無を言わせぬ彼女のオーラに導かれるように、Gさんと2人案内されて2階の展示室へ。
ただ道を聞くだけのつもりだったので、正直見学にはあまり乗り気でなかったのだが、階段を上がったところで思わず声をあげてしまった。

すげー数の土器、土器、土器…ッ!!

第十二回「最北端古墳考」

状態よく発掘されたという数百とも思える無数の土器の迫力は圧巻であった。
他にも、発掘された埋葬品や完成度の高い装飾品。

第十二回「最北端古墳考」

別室では江別の太古から開拓、産業系の重要文化財の数々になぜかチョウチョの標本コーナーと、すべてが充分興味深すぎる…。

な、なんだこの充実度?これで入館料200円は心根が優しすぎるだろ…!
呆然とする我々に、受付兼ガイドさんのムダのない説明が畳み掛ける。網走刑務所博物館の語り部のおじさんにも引けをとらないプロのべしゃり…。
…かなり面白い、小規模ながら色々クオリティ高いですこの資料館。あたくし的に北海道の必見スポットに認定!

一通り見回り、受付兼ガイドさんが古墳までの行き方をGさんに懇切丁寧に説明してくれ、ついに一路江別古墳群へ。
ああ、引き止めてくれてありがとう江別市郷土資料館の受付兼ガイドさん!!
これであの忌まわしい古墳アドベンチャーに陥らずに済むでしょう!すべて貴女のおかげです!

結果、失敗フラグが立つヒマもなく、10数分走ったところで、「江別古墳群」を無事発見。

第十二回「最北端古墳考」

入り口の王道系古墳看板から野道を15mほど行ったところで急に視界が開けた。

第十二回「最北端古墳考」

うわーあ、なんて優しい空間…!
原型をとどめていないという受付兼ガイドさんの説明どおり、のどかに広がる小さめの校庭くらいの緑の敷地内に、うっすらこんもりしたものがいくつも点在して佇んでいる。
ふおお〜癒やし系〜♬
なんだろうこの感じ…?あ、あれですあれ、コイン入れる前のモグラたたきだ。
少しアタマが見えてんだけどどこも主張しない伸び伸びとやすらかなお墓たち…。

第十二回「最北端古墳考」

北海道の空はどこまでも広く澄みわたり、その下で江別古墳群は誰を意識するでもなくただ優しく、ただのんびりとそこにあったのでありました。

(古墳よ、永遠の癒しを抱け…余計なお世話だけど…。)

第十二回「最北端古墳考」

お世話になったGさんに別れを告げ、夕暮れの旭川空港のロビーで敬意のサッポロビールを飲みながら、見たこともなかった自然風景と最北端の古墳に思いを馳せた、北の国のノンポリからでございました…。

第十二回「最北端古墳考」