第三十四回「熱中古墳動物園考」
投稿日:2016年7月30日
まりこふん会長と久々にサシで古墳巡りに行ってきた。
事の始まりは、「夏休みは小学生らしく生活したい派」であるあたくしが、せっかくだからどこか行きませんかと会長に提案したところ、
「新川崎に古墳がある動物園があるそうです!そこに行きたいですッッ!!」
という返答が光の速さでやってきたためである。
古墳・・・か。
この人にどこ行きたいか聞いたらまあそうなるわな。個人的にはどっちかっつーと中野ブロードウェイのまんだらけの方が・・・つか「古墳がある動物園」てなんだ。
そんなフンワリとした疑問と不安を胸に抱きつつ、ノーと言えないニッポンのノンポリ、なしくずし的にこのたびも古墳へGOの、大人すぎる遠足と相成ったわけである。
当日、午前10:30に新宿駅に集合。
「イチキさん、スポドリ持ってますか?スポドリ!」
と熱中症対策に余念がない会長に「夏におけるスポーツドリンクの重要性」を説かれながら湘南新宿ラインに乗りこみ、車内では
「私はマンボウが怖いので来世はマンボウに生まれてくれば怖くなくなるに違いないのです」
というよくわからない会長の自論を聞きながら、
(スポドリって略す人、本当にいるんだ・・)
などとぼんやり考えているうちに新川崎駅到着。
駅で確認した周辺地図の情報をもとに歩き出すと、さすが動物園だけあってサルやフラミンゴやペンギンなど、多種多様の動物のイラストのついた看板が続々と目に止まる。
「このイラストにある動物は全部見られるんですかね?」
と歩きながらちょっと嬉しそうな会長。確かに、ここに至るまでは「動物園」というキーワードを完全にスルーしていたが、いざその気配がしてくると少しだけ動物園が楽しみになってきている自分に気づく。いいぞ、小学生の夏休みらしくなってきた・・・!
約10分後、珍しく迷うことなく目的地「夢見ヶ崎動物公園」に到着。
しかし・・・
「また、登りですよ・・・」
げんなりと言われて見上げると、目の前には動物園に続いているのであろうが全く先の見えない天国への階段がそびえ立っている。本当にこの2人のどっちが、雨女ならぬ「階段女」なのかと疑いたくなるほど、2人で廻る古墳ではほぼ100%の確率で必要以上に急な上り坂に遭遇する。どっちだ妖怪階段女!
しかし息を切らして登りきった目の前に広がっていたのはそれはそれは美しい光景であった。緑あふるる広場には親子連れが憩い、広場の前には「了源寺」というお寺が悠然と構え、なんか全体的に広々としている。
途端にそばにあった自販機を見つけた会長、再び
「スポドリ、スポドリ」
と駆け寄りながら嬉しそうに水分調達。どうもこの人、熱中症対策とは別に「スポドリ」って言いたいだけっぽいフシがある。
ここの古墳は9号墳まであり、そのうち1号墳と5号墳は原型がないらしい。
かなり広いと思われる敷地内を地図で確認し、古墳へGO。
折しも晴天。気分良くニコニコと歩いていた2人、ふと、ある違和感に気付いた。
・・・そう、一瞬忘れてましたがここ、動物園でしたよネ?ここ来るまでに看板に動物の絵がいっぱい描いてありましたよネ?園内にも動物デザインのアイテムがあっちこっちあるんですが肝心の動物がいないのであります。
「動物園じゃなくて、動物イラスト園なんですかね?」
などとお互い首をかしげながら歩いていたその時・・・
・・・その日、人類は思い出した・・・自分たちが動物園にいるのだということを・・・
レッサーパンダ、キターーーー!!!!!
突然目の前に現れたレッサーパンダ宅、中では愛らしいラスカルの子どもたちがじゃれあったり笹を食したりしてくつろいでいる。
あわわ、あわわ、なんだこのCAWAII生き物は!!!
普段はゆるキャラにもモフモフにも何も感じない方だが、レッサーパンダのこの無自覚にあざとい可愛さは犯罪であった。
ガラス越しのかわいこちゃんたちに夢中になりながらも辺りを見回せば、他にもシマウマ、ペンギン、フラミンゴに不思議なサル、行き道の看板で見た通りの動物たちがのんびりと夏の午後を過ごしていたのである。どうやら思っていたより奥にあった動物エリアについに足を踏み入れたようだった。
ど、動物園だ!本当に動物園だった!なんだこれ、なんだこれ、すごい楽しいぢゃないか!草食癒し系の動物しかいない優しい動物園。シマウマ緻密!ペンギン唯我独尊!ミーアキャット男前!
・・・正直に言います。この時あたくし、古墳のこと完全に忘れてました。
会長もわりと同様。ひとしきり動物との時間に没頭してそのことに気づき、(いかん、このままではファンシーな1日で終わってしまう)と、古墳脳を取り戻すべく再び歩き出す「動物にコーフン協会」の2人。
この「夢見ヶ崎動物公園」敷地内にはすでに形状がないものも含めて計9基の古墳があるというのは先述の通り。
地図通りに巡ればほぼ問題なく出てきてくれる、方向音痴にとってはとても親切な古墳群である。
秘密基地のような森閑としたたたずまいで横穴式石室を抱く3号墳。
立派な木々や石灯籠に囲まれ、墳頂からのビューも絶景の美人な4号墳。
気持ちいいほどスタンダードな9号墳。
などなど、それぞれ個性的。とてもとても心地いい・・・。
しかし、ハテ、と思う。
形状も周囲の風景もみんなそれぞれ違うのに、ここの古墳たちには何か圧倒的な共通点がある・・・。と思ってたら会長が嬉しそうに言った。
「ジミですねー!!」
あ、それだ。ジミなの!もちろんとても良い意味で!地味かわいいっつか、ものすごい謙虚っつか。
これ説明が難しいんだが、それぞれの古墳がこの「夢見ヶ崎動物公園」の空間に溶け込んで究極のリラックス状態にある感じ。誰も主張してこない。
いうなればここのレッサーパンダら草食癒し系の動物たちと同じ匂いの柔らかい印象・・・。心地よい。ものすごく心地よい。
事実、子供らが集う遊具の近くにある8号墳に至っては、会長が地図で確認して間違いないであろうにも関わらず本当に古墳なのかいまいち掴めない「クラスで存在感ないけど話してみるといい奴だよね」的ニュートラルぶりであった。
とゆうわけで、諸々堪能して下山。
結論から言うと、2人共、心底来てよかった、と思った。
動物と古墳が驚くほど自然に共存する癒しの空間「夢見ヶ崎動物公園」。マジここオススメ。「小学生らしい夏休み」大成功でありました。
余談だがその後、湘南新宿ラインで新宿へ戻り、東急ハンズ7Fで8月22日まで開催している古墳コーナーに立ち寄った。こっちもなかなか面白いです。2人でお揃いの埴輪アクセサリーをお土産に、僕らの夏休みは過ぎていったのでありました・・・。
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