第三十六回「俗物女優埴輪声優考」
投稿日:2016年10月7日
前回のコラムで「はにキモ」について書いた。
まりこふん会長の新刊「はにわ」刊行記念イベントのための大喜利企画。
様々な形態のいにしえのハニワたちに「はにわのキモチ」になって好き勝手セリフをつける、略して「はにキモ」。
テンションだけでチャレンジしてみたものの、読み返した自分の「はにキモ」のセンスレスさに憂鬱な気持ちになっていたある日、会長が言った。
「イチキさん、ハニワ、やりませんか?」
・・・ホワッツ?
ハニワを・・・やる?
ハニワと・・・飲る?
ハニワを・・・殺る?
キャプテンのオーダーの意味がわからずよく聞いてみたところ、9月1日の「はにわ」刊行イヴェントで開催される「はにキモグランプリ」で、スライドで流される投稿作品のハニワたちの声を演じてくれないかと言う意味であった。
おお!そいつぁなんとエスペッシャリ!!
まりこふんが世界で唯一の古墳シンガーなら、あたくし杉並区で唯一のハニワ声優というわけか!面白そうだ、やるやるやる!
と若干自意識過剰に二つ返事で引き受けた。すでにお忘れの方もいらっしゃるかと思うが、腐っても腐女子でもこれでもあたくし役者である。大好きなアテレコ、しかも相手は未知数のハニワと聞けばイヤでも血が騒ぐわけだハニ。
いうわけで、イヴェントも間近に迫ったある晴れた日の昼下がり、スタジオではなく何故か我が家に集合。
数週間前に引き受けた時はえらいやる気満々だったあたくしだったが、当日、昼まで寝ていた起き抜けの頭で会長を招き入れお茶を飲んで世間話している間にも色々方向を見失い始めていた。
(うお、やゔぁい、血圧・・・テンション上がんねえ・・・そもそも、ハニワの声ってなんだ・・・?)
しかし、ともあれどうにかやりきらねば協会の女優担当(だそりゃ?)の名がすたる。
とりあえずどーゆうテイストでのぞめば良いかお伺いを立てたところ、会長は笑顔でうなずきこう言い切った。
「まあ、いーですよ、好きな感じで~ o(^▽^)o」
・・・ノープランかよ!
ひとまずお茶を飲みながら会長と二人パソコンで「はにキモグランプリ」で見事上位に残った作品と写真を確認しながら方向性を考えることにした。
が、方向性、なかった。
まーさすが優秀作品たち。テイストも切り口もバラバラ、王道もあればどシュールもあり、同じハニワでキャラも性別も違ったりてんやわんやである。
投稿された通りの字面で見ると大変オモシロいんだけども、これに声当てるのはなかなか至難の技じゃね?
昔、ネット上に投稿された「おもしろ可愛いネコの動画」に声を当てるという仕事をやったことがあるが、あれ絶対アテレコ要らなかったもんな、そのままでよかったもんな。そんなことをボーゼンと思っていたところ、同じく画像を睨んで考えていた会長が言った。
「これもう、うちらの解釈で読むのが一番良くないですか?」
つまり、少々投稿者さんの意図に反することにはなるが、今回このイヴェントにおいてスライドで見ていただく上では声キャラとイメージ先行させるが正攻法だということか。
なるほど・・・うん、なんかわかってきた。
というわけでその方向で発進。
で、そのきっかけになったのがこちらの作品。
「アイドルやってまーす」と言うキャプションのついたこちら、まあフツーならキャン◯ィーズっつーかA◯Bっつーかいわゆるキラキラの美少女ボイスでいくところを、それじゃ聞いててつまらなかろうとあえて「不幸そうな団地妻たちの妄想」を選んだ会長とあたくし。
「(超低音の小声)・・・あいど・・・る、やってまー・・・(す)」
うん、なんかこれだ。
そこからの我々ふたりの判断と展開は速かった。その後も出てくるアイドル系は「そう簡単にカワイコぶらせんぞ!」とばかりに全て生気のないアンニュイ女子と化し、
超武人ハニワの「切り捨て御免!!!」は深夜アニメの萌えキャラヒロインになり、「歯みがけよ!」とドリフの決め台詞を放つ3体組のハニワには迷わず乙ゲー風キャラ違いのイケメンボイスがあてがわれ、「あいつも懲りないねぇ」と言ったセリフの穏やか系のおじさんキャラたちはなすすべもなく平◯成さんキャラへと変貌を遂げ(させられ)た。
ああ、愉しい!最初の頃の低血圧も何処へやら、会長と二人、爆笑苦笑失笑を繰り返す。そうして、あたくしの持ちうる声の引き出しを天袋まで全開にしたオネエキャラ、萌えキャラ、CMパクリキャラ、火垂るの墓の節子キャラ、言っといて自分ウケキャラといった数々のルーティンを経て、約3時間かけて約50体のハニワたちの「はにキモ」音声版が完成したわけである。
当日イヴェント会場でご覧になった投稿者のみなさん、「てめえふざけんなそっちじゃねーよ!」と何回心の中でディスられていたとしても、素敵な作品をお預けくださりありがとうございます!あたくしこういう作業でご飯何杯でもイケる方です!!
残念ながらイヴェント当日はあたくし別件でお伺いできなかったのだが、次回は是非生アテレコさせていただきその場で切腹したい所存でございます!
余談だが、後日はにキモグランプリの結果を会長から聞いて納得したが、あたくし的には究極のカオスとモヤモヤをくれたこの作品に「ノンポリ会員賞」を差し上げたいと思った次第であります。もう、何が何やら・・・ビバ!はにキモ!フォーエバー!!
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