第三十回「山有山梨古墳冒険考」(後篇)
投稿日:2016年4月3日
「前回までのあらすじ」
取材のため山梨県へやってきた会長まりこふんとノンポリ会員イチキ・・・。
古墳アドベンチャー中に山梨県のUMA・巨大マガタマに襲われた二人だったが、死闘の末ついに創業60年の焼き鳥屋にたどり着いたのであった・・・!!
・・・まあ、半分だけあってるネ!
ってわけでムダを承知の大長編。今回は山梨の古墳をめぐる旅の後篇、二日目のご報告である。
この日最初の目的地は「加牟那塚古墳」。ちなみに「カンナヅカ」と読む。
前夜はホテルの部屋でビールを飲みながら遅くまで古墳まったく関係なくアニメ「銀◯」の上映会をして盛り上がっていたわれら、バスの中では当然のように本編からの妄想話で盛り上がる。
集中力がないのではない。オンオフの切り替え上手なだけだ、多分。
そして昨日からバスに乗るたびに陣取る席は安定の最後尾。あたしら修学旅行中のクラスのヤンキーか。
そうこうするうちに目的のバス停「千塚中町」に到着。ちなみに「チヅカナカチョウ」と読む。昨日からいちいち読み方ムズイノー。
出発時から「2日目は迷いまくりの超絶アドベンチャーになりそうです・・・」という会長の緊張の面持ちに、あたくしノンポリも覚悟を決めてバスを降りたつ。
(どこまでもついていきます会長!じっちゃんみたいねとよく言われるこの健脚にかけて・・・!)
などといらぬ気負いで本日も快晴なりののどかな道路を情報を頼りに歩く道行二人。
広々とした公園でゲートボールに勤しむ老人たちを見て、そういえばあたくし中学時代ゲートボールクラブに所属していたという要らない経歴を報告しようとしたところで会長が言った。
「あ、アレだ。ありました」
指さす先には「加牟那塚古墳」の看板。もうすぐそこにあるらしい。
あれ、迷うんじゃなかったの?と拍子抜けして進んでいくと、ホントにそれは唐突に現れた。
(わー、癒し系~♬)
ほんわりと丸いお菓子のようなその円墳は、青空の下で昼寝をしているように佇んでおりました。
石室が見られるというので楽しみにしていたのだが、一周回って見つけた石室の入り口は頑丈な門と南京錠で封鎖されている。あら残念・・・
それでも諦めきれないらしく
「ちょっと交渉してきます」
とどこやらの役所へ電話をかけに行ったまりこふん。あたくしひとり石室前でお留守番。
(嗚呼、静かだなぁ・・・古墳、生きてるなぁ・・・)
鳥の声と風の音しかないこの静寂で、加牟那塚古墳の包容力と存在感と穏やかな日差しに心地よく圧倒されていると、15分ほどして会長が残念そうな顔で戻ってきた。
「中に入るには事前の予約が必要だそうです・・・」
と肩を落とす。なるほど、それでは仕方ありませんな。
「係の方が言うには、古墳が『ハラんで』いるので危険だから鍵をかけているのだそうです。『古墳がハラむ』って、どういう意味でしょうねェ?」
と問われてとっさに浮かんだ「古墳の中に新しい古墳が」という古墳マトリョーシカ幻想を即座に打ち消しあいまいに首を振る日本のあたくし。
というわけで石室潜入を諦め、周りを散策したり墳頂の中心で古代を叫んだり、充分すぎるほど堪能して癒しの場を後にしたのでありました。
加牟那塚古墳、マジあったかくて可愛らしいおねえさん古墳でございましたヨ、また逢いとうございますナ!!
甲府駅に戻って念願の名物・ホウトウを食べて体力レベルを回復したわれら、活動再開。
次の目的地は「姥塚古墳」。
二ノ宮というバス停で下車し、再び身構えるあたくし。
(午前中の加牟那塚古墳はあまりにも順調に見つかりすぎた。あれはきっとこのあと最後のミッションが相当過酷なアドベンチャーになることを意味しているにちがいない!)
決意とかじゃなくて、もはやただのトラウマになっている古墳アドベンチャーへの危機感を胸に黙々と歩く。きっとこの姥塚古墳への道のりは険しいものになるであろう。会長も同じ気持ちであるはず。しかし彼女は言った。
「あ、アレだ。ありました。」
ちょぉ!どゆことぉっ?!なんで迷わないのっ?なんなの今回?ラッキーなの?!ありがたいのっ?!
どうやら、古墳にコーフン協会の二大方向音痴のわれらを強力にサポートしてくれている神様が山梨には存在するらしい・・・
ありがたく戸惑いながらもほぼ難なくたどり着いた「姥塚古墳」は、南照院というお寺の奥に寺を背後から守るかのように荘厳にそびえ立つかなり野性味あふれる古墳であった。
無精髭のように鬱蒼と木々に覆われた表面から漂うただならぬ気迫が、そこはかとないダンディズムを匂わせる・・・。
なんか、さっきの加牟那塚古墳とえらいタイプ違いだよこれ!なにこのワイルド、これもうハードボイルドだよ、古墳界の松田優作だよ、なんかカッコイイんですけど!
ちょっと気圧されつつも興奮して石室の入り口を見ると、今度は南京錠じゃなくて黄色と黒の立ち入り禁止看板。さすが危険な男・・・。
石室奥に目を凝らせば、蜘蛛の巣だらけの木の扉の奥には賽銭箱。充満する古代から残る歴史の気配になんかもう、本能的に鳥肌が立つ。
ちなみに「姥塚」の名前は、百合姫という山姥が大男と競争して一晩のうちにこの塚を造ったという伝説に由来するという。
「ゆりひめ」なんてキュートな名前のヤマンバてのがイマイチ想像しづらいが、結局「だからキラキラネームつけると将来こういうことになるぞ」という戒めの意味をも含んだ由来だと理解するノンポリ。
その圧倒的な存在感に引き寄せられたまま、それぞれに姥塚古墳から男の美学を学んだふたりでございました。ああ、イカしてた。最高にダンディーなアウトロー古墳でございました!
「ねェ、また逢える?」なんてアンニュイにロンググッドバイ。
全てのミッションを終えた後は、バス停近くの百円ショップで遊び、1時間に1本弱というバスが来ないことに慌ててあわやヒッチハイクをしかけつつも遅れて到着したバスに乗って甲府駅へ戻ったふたり。
無事に新宿行きの高速バスに乗り、名残惜しくも山梨県を後にしたのでありました。
本当に、素晴らしい古墳旅行でございました。
そろそろ、墳活シーズン到来の季節でございます、てか山梨、オススメであります!山梨LOVE & FOREVER!!!
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