第一会員イチキ游子の古墳に混乱コラム

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

投稿日:2015年7月27日

人間だれしも、一度は戦わねばならぬ時がくる・・・。

先日、某テレビ局の取材で、群馬県藤岡市での古墳巡りが執り行われた。
朝10時、群馬藤岡駅で2人のスタッフさんと合流。

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

メンバーは、会長、理事長、タチハナ会員、あたくしである。
メインの七輿山古墳を皮切りに、ニュータウンの新築物件の如く立ち並ぶ沢山の古墳たちを愛でながら、途中インタビューなども交えて撮影は順調に進んで行く。
その日の群馬は快晴猛暑。天国のような美景の中、協会の三大リアクション王たちも安定のコーフンぶり。

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

古墳も田んぼも空も、全てが輝いていた、平和だった、そう、あの時までは・・・

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

ニコニコと田んぼの近くを歩いていると、会長がふと地面を指差し何気なく言った。
「あ、カエル」
次の瞬間。悲鳴とともにあたくしの脚に装備された加速装置が稼働した。そのまま10メートル本気ダッシュ。我に返って振り返ると、突然の奇行に驚いたリアクション王たちがノーリアクションで呆然とこちらを見つめていた。
・・・なぜか普段から「イグアナ飼ってそう」とか言われるあたくしだが、実はカエルに限らず、生まれた時から完全無欠の「爬虫類及び両生類恐怖症」なのである。
平素から道路にヒモが落ちていればビクッと立ちすくみ、「木かげに入るよ」を「トカゲがいるよ」と空耳しては悲鳴を上げて飛び上がる。もう前世で何かあったとしか思えないレベルで爬虫類も両生類も、それらを表す文字すらも、足の有無に関わらずああいった類のものがまっっっっっったくダメなのである。嗚呼、書いててトリハダ立ってきた。

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

というわけで、のどかな群馬の田園風景は一瞬にして(限定1名の)戦場と化した。

しかも田んぼが多い土地柄、彼らの人口密度は並大抵のものではない…。
自然との共存の大事さは痛いほど分かっているつもりDeath。BUT 人には譲りたくても譲れないマイシルバーシートがあるのDeath・・・!

(カエル怖い、歩くの怖い、田んぼの近く怖い…)

完全に心が砕けたヘタレノンポリ会員。しかしこの好天気、この絶好の古墳日和に、なんとかこのまま古墳巡りを楽しみたい・・・!無意味に苦悩するあたくし、ついにある秘策を思いついた。

名付けて「坂本九大作戦」!
いや、ただ足元みないように「上を向いて歩こう」という小さな大作戦である。

ところがこれが意外に功を奏し、時間が経つにつれ段々とカエルへの薄れゆく恐怖感に調子を取り戻したあたくしは、皆と共に本日最後の取材場所、理事長イチオシの「伊勢塚古墳」に辿り着いた。

群馬県が保存しているという小ぶりの円墳。なんというか、見てると「ほおおおぅ…」と安堵のため息つきたくなる、木陰に佇む癒し系イケメン古墳であった。
とりあえず周囲を一周してみる。
この古墳にはひとつのオプションがあった。
石室に入ることが出来るのである。
しかも、リアル石室。

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

入室出来る石室がある古墳自体限られているが、会長に言わせると、あたくしがレプリカではないホンモノの石室に入るのはほぼ初めてらしい。わーいわーい!そりゃノンポリでもテンションあがる。

撮影チームが内見した後、順番に背を屈め、会長、タチハナ会員、あたくし、理事長の順番で石室へのトンネルを進んで行く。わくわく!WAKU WAKU!!

・・・その時、あたくしの足元で何かが・・・はねた・・・。

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

「★◯〆▼%*↑↓★★◯〆▼%*↑↓★!!!」

それが何かを確認するまでもなく、天井の低い石室のトンネルの中でミラクルスピンの方向転換したあたくしは、ギョッとしている理事長の脇をすり抜けて脱兎の如く古墳を飛び出した。
まさか・・・ここまで奴らの手がまわっていたとは・・・

「先生、カエルがいたから石室に入れませんでした」

結局なすすべもなく、絶頂猛暑のお外でお留守番をするしかない哀しみのノンポリ。
ああ、石室入りたかったなぁ。撮影なのになぁ。申し訳ないなぁ。
まるで熱湯が我慢できなかった芸人のような気持で撮影が終わるのを待つ。

しかし、40分後、出てきた面々がショゲているあたくしに、今なら多分(カエルは)大丈夫だからせっかくなら入って来てはどうかと言ってくださったのである。
み、みんな・・・!小学生レベルのヘタレのあたくしの夢を叶えるためにそこまで!(←多分皆さんにそこまでの意味はない)
もうあとへは引けなかった。石室見たい。みんなの情熱に応えたい!(←多分皆さんにそこまでの情熱もない)
「手を引きましょうか?目をつぶって走れば大丈夫ですよ、行ってらっしゃい!」
という理事長の、助ける気があるのかないのか不明な激励で腹を決めたあたくし、半眼の状態で一気に石室めがけて忍者のような低姿勢で走り込んだ。
と・つ・にゅ・う
「・・・うわーあ・・・」
石室の中、しっかりと目を開けて周りを見たあたくし、思わず感嘆の声。
すっげえ、まじすっげえ。入り口のせまさからは想像出来ない広い室内には大小さまざまな美しい石がひとつひとつ恐ろしいまでに計算された精密さで重なり合い、見事に四方の壁と天井を作り上げている・・・
正直、トリハダ立った。こんなん、どーやって作ったよ・・・ゲイジツ品だよ、まぢで。敬愛する人を見送る情愛ハンパなければこりゃ出来なくなくなくね?

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」

その後入ってきたスタッフさんに壁面を照らしてもらい、ひとしきり撫でたり見回したり心ゆくまでリアル石室を満喫し、太陽の下に出てきたあたくしを、協会員3人ががニヤニヤして待っていた。
「入ってよかったでしょー?」
と聞いてきた会長に素直にうなずく。
うん。よかった。ホントによかった。

夕暮れの群馬藤岡駅のホームで今日一日を回想。自然満載、古墳も満載。天国だったヨ、群馬県・・・。
もっと自然と仲良くなろう。オケラだってカエルだってみんなみんな生きているんだ友達なんだ・・・!

まあ全部、終わったから言えることなんだが・・・。

第二十二回「絶景天敵古墳撮影旅考」