1. トップ
  2. 協会日記・古墳に混乱コラム
  3. 古墳に混乱コラム
  4. 第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)
第一会員イチキ游子の古墳に混乱コラム

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

投稿日:2016年2月24日

今月の初旬、まりこふん会長とふたりで古墳巡りをすることになった。
行き先は山梨県、山があってもやまなし県である。
しかもあたくしことノンポリ、古墳巡り初の一泊旅行。・・・アガる・・・ちょーアガる。

早朝の新宿から高速バスに乗り一路山梨へ。車内では富士山が見えるたびに「おお」と歓声をあげる以外はほとんど最近観たアニメの話で盛り上がり、完全に目的を見失ったまま約2時間後、甲府駅へ到着。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

早速活動開始。

駅前のホテルに荷物を預け、目的地へのバスを捜しつつ記念撮影を自画撮りしようとウロウロする我々に、突然一人の奥さんが
「写真撮ろっかァ?!」
と、マブダチだったかと錯覚するハイテンションの笑顔で声をかけてきた。
アウェーの土地で突然のファーストコンタクトに、新手の勧誘ではないかとややビビりの我らからデフォルトの上機嫌でスマホを受け取ると、

「ハイ、イキマース!」

と、何があったのかいきなり奥さんまさかの12連写。
止まらないシャッター音に動揺しながら

「アレー?アレー?ヤダー!ゴメンネ!ゴメンネ!確認シテネー!」

とむやみに照れながら我々のお礼もろくに聞かず笑顔で去って行った。
・・・なんかよくわからんが、ありがとうございました・・・到着早々に素敵な記念写真が撮れました。しかしあの方、あたしら以外の人間にもちゃんと視えてただろうか・・・。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

そんなこんなで今回第一の目的地「山梨県立考古博物館」へ。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

バスで30分ほど行ったところにあるその博物館は、広く山々に囲まれた快晴の空の下、雄大に鎮座しておりました。ああ、いい気分だなぁ・・・
サテいざ見学へ!と進もうとしたところでやっぱりあった、ライフワークの顔ハメにも余念がないまりこふん。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

いやしかしこの博物館、古墳好きならずとも大ッ変に素晴らしかった(残念ながら内部の写真は公には掲載できないのデスが・・・)
常設展示には、縄文時代から江戸時代まで、食器や武器などありとあらゆる出土品のワンダーランド。
中でも圧巻は縄文時代の土器である。もうこの時代天才多すぎる。本能のままに形作っちゃいました的な独創性溢るる大胆なデザインの数々は、なんつーかもうむしろ現代アートで宇宙。
これやっぱ売れっ子デザイナーとかいたんだろうなぁ、そんで案の定パ○リ問題とか勃発しちゃったんだらうねぇ・・・。

などと古代にいらん想いを馳せながら、アヴァンギャルドな縄文時代を抜けて次の弥生時代のエリアに入ると、こちらはまた機能重視というか、全体的にツルッとしていて色んな意味でムダがない。

「弥生時代の土器はシンプルですね」

と感想を述べると、会長は一瞬立ち止まり、立ち並ぶ弥生土器を見つめ、

「・・・やっぱりね・・・」

とつぶやくと、また無心に調査を再開した。

(ちょ、待って!ナニがッ?ナニがやっぱりね?)

会長の背中を追いながら、下克上への道は険しいとノンポリはこころのそこから思いました。

一通り博物館を見学した後は、いよいよ古墳巡りである。

「すべて『墳プリート』しますよ!」

とハリキる会長の古墳用語の意味が一瞬本気で分からず「え?」とフツーに聞き返しつつ行動開始。

重ねがさね抜けるような青空の元、頂上にある研修センターまでの道に大小たくさんの古墳が見られることへの期待と高揚感たるや・・・!

早速、先陣切って現れたのは、円墳と前方後円墳の美しきデュオ「丸山塚古墳」と「銚子塚古墳」である。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

どちらもこれ以上はないほど入念に整備された麗しき箱入りガールズっぷり。墳頂からの眺め(古墳ビュー)ももう文句言ったらバチが当たるほどビュリホ。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

ポカポカ陽気の中、ここで昼寝したまま土に還って副葬品となるのもわるくないとも考えた、が、先は長い。

少し雪の残る軽い傾斜の山道を登り、各所に設置された案内板を頼りに古墳をめぐる。

そんな中・・・

コース途中に訪れた「鍋弦塚」という塚で、ちょっと不思議な出来事があった。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

「ナベヅルヅカ」と読むのだが、会長曰くここは正確には古墳ではないらしい。
近寄ってみると、素人目には古墳だと言われても何もおかしくない、先ほどの古墳デュオに比べるとお世辞にも手入れが行き届いているとは言えない小ぶりの円墳のような小山と隣にはこれまた荒廃した小さな白い社が並んでいる。
古墳でないと聞いたものの、写真では見えないが、鍋弦塚のてっぺんには名称の部分が折れてしまって「古墳」の二文字しか読みとれない古びた杭のようなものが突き刺さっている。
古墳じゃないのに古墳と主張してあることに不思議な気持ちになりながら社の中を覗くと、長年手入れもお参りもされた様子のない内部は恐ろしいほどに朽ち果てている。

(・・・なんか、いろいろサッドネス・・・)

なんとなく、もの悲しい気持ちになりながら2人で社に手を合わせ、もと来た道に戻ろうと塚と社の間を通り抜けようとした時、ふとある嗅ぎ慣れたフレーバーがあたくしの鼻をかすめた。

(あれ、お線香の匂い?)

と思った瞬間、不意に会長が言った。

「なんか・・・お線香の匂いがする」

神妙な顔で雑草だらけの周りを見回す会長。
社の中は線香はおろかホコリだらけで木の匂いすらしなかったというのに、どゆこと?

歩き出そうとした途端、今度は2人以外誰もいないはずの野原のあたくしの背後で、一瞬確かに草を踏みしめる人の気配。
ちなみにあたくしの霊感は右目左目ともにゼロである。

「・・・・・・」

なんとなく狐につままれたような気分でしばし沈黙するふたり。

まあ、現実論、非現実論、憶測すればきりがないが、もともとオカルトオチにするのは嫌いな性分の二人なので、

「とりあえず、行きましょうか・・・」

と社に戻り、再度無言で手を合わせたのち鍋弦塚を後にした、というSF(スコシ フシギナ)体験でございました。

その後は順調に古墳を巡り、頂上にある風土記の丘研修センター周辺のシュールで迷路な方形周溝墓、意外に楽しい遊具広場などを通り、一基だけたどり着けなかった古墳があったことと、1時間近い帰りのバス待ちの間、暖を取ろうと訪れた道の駅が定休日で極寒の夕暮れを強風にあおられた信玄餅ののぼりに顔面を叩かれながらほぼ無言で過ごしたことを除いては、好天と美景に囲まれ大変に充実した山梨の半日でございました。

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)
第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)
第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)

甲府駅前に戻り、創業60年という老舗の焼き鳥屋でビール片手にしみじみと今日という日に想いを馳せながら、山梨の夜は更けていったのでありますた・・・。

「次回予告」
さーて、次回のノンポリさんは・・・?
翌日の古墳アドベンチャーで遭遇した「古墳界の松田○作」とのデカダンスな1日をお送りします!
んあ・・ゲホッ、ゴホッ!!

第二十九回「山有山梨古墳冒険考」(前篇)