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第一会員イチキ游子の古墳に混乱コラム

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

投稿日:2016年5月27日

去る5月4日、みんなして伊豆に行ってきた。
目的は誰がなんと言おうと「伊豆極楽苑」開苑30周年記念イベントである。
まりこふん会長がテーマ曲を歌い、我ら協会員も軒並みZOKKON LOVEなアンダーグラウンド観光珍スポット・極楽苑の30周年と聞いては無理やり押しかけてでもお祝いせねば気が済まぬ。
というわけで、今回は伊豆の古墳巡りを兼ねた前日からの前乗りツアーと相成ったのでありました。

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

毎度おなじみ、天才ドライバー・ビリーさんの運転で、まりこふん会長に伊藤理事長にあたくし、快晴の空の下、一路伊豆へ。
ライブに出演のギタリスト・ももづか怪鳥は機材を乗せた別車で来るため今宵の宿で合流、トークに出演のタチハナ副理事長ら、他の出演者はそれぞれ明日の現地で合流予定である。
それにしても、本日のあたくし、出発時に家の鍵をかけ忘れて集合時間に遅刻するわ、車に乗ったら乗ったで何回やっても覚えないシートベルトの装着に20分以上かかるわで、ようやく落ち着いたのは、銭湯の壁じゃねえかと疑いたくなるほど美しい、モノホンの富士山が見えてきた頃であった。
なんか今回地味にバタバタするなあ、これ以上面倒なことが起こらねばいいなと、正体不明のフラグの気配に内心少し怯えるノンポリ。
その予感は、あながち間違ってもいなかったのである・・・

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」
第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

さて、途中SAでアイス食べて、静岡入り。本日最初に目指す古墳は沼津市内にある「清水柳北遺跡1号墳」。緑の眩しい静かな道を走り、もうすぐ到着かとニコニコしていた時、第一の試練があたくしを襲った。
運転していたビリーさんが突然前方を指さして嬉しそうにこう叫んだ。

「あー!ヘビ!」

その瞬間、あたくしの笑顔が凍りつき、全身硬直。青い空の下の長閑な景色は一瞬でボクの戦場と化した。
再三にわたって申し上げているが、あたくし爬虫類・両生類といった類の生物が、前世からの因縁レベルで天敵なのですよ!ぶっちゃけ2行前のセリフを書いたことすらトリハダなうなのですよ!
1年前、群馬の古墳ロケでカエルに追いかけ回されたトラウマが蘇り、座席で完全に固まるヘタレのノンポリ。

「あ、あたし・・・車の中で待ってるんで、3人で行ってきて、うん、むしろ、ぜひ・・・」

硬直したまま早くも地獄を見てきたような目で訴えるあたくしに、みんなが優しい笑顔で言った。

「大丈夫だよ、いたのはあの先だから、けっこう離れたよ」

そーゆう問題じゃねえんだよォ!てかあんたら指差してるとこ完全に徒歩圏内じゃねえか!さっきの爬虫類と目的地かぶったらどうすんだよォ!
・・・しかし、それ以上の団体行動を乱す勇気はない長女体質。やむなく車を降り、時効成立2分前の犯罪者のような足取りでビクビクとみんなに続く。

それはそれとしてこの「清水柳北遺跡1号墳」は高い石垣の上にあり、とても美しく見学エリアも整備されているにも関わらず、どーゆうわけか現在「立ち入り禁止」であった。
ありゃりゃ・・・。案の定、会長と理事長から悲痛なまでの絶望のため息が漏れる。さぞや残念でありましょうなぁと同情するあたくしとビリーさん。
だがしかし、我々は知ってる。この人たちの電子辞書には「アキらめる」という言葉が入っていないことを。・・・見ててみ。

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

ホラ、登った!大人なのにすごい高いとこ登った!

大して幅のない石垣のてっぺんをカニ歩きしながら少しでも古墳に近づこうとする隊長と参謀。古墳へのブレることのないポジティブな愛と執念。
いつ爬虫類と遭遇するかビビっていたあたくしだったが、死と隣り合わせのセマい足場で飛び上がってはしゃぐまりこふんと、その隣で古墳にカメラを向けながら
「ハイ!笑って笑って!!」
と、チャラいグラビアカメラマンのように他人の墓に本気で笑顔を促す理事長、不審者すれすれのツートップを見ていたら、見えない敵に怯えている自分がバカバカしくなってきた。
のであたくしも皆にならって石垣に登り、精一杯古墳を堪能。近づけないのは残念なれど青空の下の清々しい佇まいがなんとも心地よい・・・。
うン、デラべっぴんさん♬
上機嫌のまま、無事に爬虫類の呪いからは解放されたあたくしでありました。

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」
第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

しかしやはり朝のフラグは気のせいではなかったらしく、次なる試練があたくしを待っていた。
再び車に乗り込み、今度は同じ沼津市内にある「高尾山古墳」へ。こちらの古墳は、道路建設のために取り壊されそうになったところを市民が署名活動などで守り、現在はなんとか無事に保存されているというレア物件。確かに墳丘から数10メートル先まで建設途中の道路が迫っており、攻防の様子がうかがい知れる。
古墳自体はなかなかゴシックというか個性的なフォルムでどこか天空の城ラピュタを思わせた。

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

それにしてもこの日は本当にとても良い天気だったんだが、反面、風が強かった。まじ、異様なまでに強かった。特に古墳に着くたびになぜか今まで体験したことがないほどの強風に遭遇。訪れた「長塚古墳」では強風でコンタクトの目にゴミが入り、他の人は大したダメージでもないのにあたくしだけが墳頂へ登ることを断念。何者かの意図すら感じる悪魔のような、なぜか主にあたくし限定で襲いかかってくる強風の呪いはさらにそれだけでは済まなかったのである。

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」
第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

「子ノ神古墳」という割合とハードボイルドにかっこいい前方後円墳に着いた時、風神の呪いは爆発した。
ハードコンタクトレンズのあたくし、勢いを増す強風に用心し、準備してきた大きなサングラスを装着し万全の体勢で強風に対峙したのだが、結論から言うとこの勇者のアイテムはまっったく役に立たなかったのである。
墳頂への一歩を踏み出した瞬間、それはやってきた。
「おわ」
ドヒューッ!と本日最強の風が真っ向から襲いかかってきた勢いであたくしの体がぐらりと傾いだ瞬間、視界が真っ暗になった。
「ーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!」
両目を襲う未曾有の激痛に思わず呻いて座り込むノンポリ。コンタクトをハズしてしまいたいがこの激風の中ではそれも叶わない。
サングラスを地面に叩きつけて両目を抑え、まさに(目がッ!目がァ!!)状態。ごめん!気持ち、痛いほどわかった!今度ラピュタを観るときは全編あなた目線で観るようにするから、助けてムスカ!!

心配した会長・理事長・ビリーさんが、森の動物たちのように集まってきてくれた頃には、あたくし痛みと理不尽な辛さによって、

「ううぇーん!ううぇーん!イタイよー!イタイよーおぅ!!」

と、大人なのにまさかのガチ号泣。あんなに泣いたのは、里見浩太朗主演の忠臣蔵で風間杜夫の内匠頭が切腹したのを、泣きながら見送る近藤正臣の演技を観た小学生以来じゃないだろうか。
開けられない目を押さえ、泣きながらみんなに手を引かれて車に戻る本日のスケープゴート。メエ~。
まじ頼むぜ沼津の風神さま!同じ風なのになぜあたくしばかりが痛い目を観るのですか!私が、一体何をしたというのですか!盗掘疑惑ですか!まじやってねっすよ!!

まあ、しかし、とりあえずこの件を持って「沼津風神呪い歌」事件(仮名)は終末を迎えたのでありました。
もう少しゆっくり堪能したかったけどなァ。やっとコンタクトから解放され、泣きはらした眼に家用メガネをかけたあたくしの思いを乗せて、車は次なる目的地へと出発するのでありました。
も少し待ってろ極楽苑・・・!

第三十二回「地獄極楽伊豆巡考(前篇)~沼津風神呪歌事件〜」

(次回へ続くはず)

【次回予告】
レア横穴に理事長大コーフン!
修善寺でまさかの大事件、宿での部屋飲みは果たして決行できるのか!?
そして気になるイベントの結末は!!